非FIT太陽光発電所のニーズと今後

世界で初めて交わした、国連気候変動枠組み条約の中での温暖化対策「京都議定書」から世界各国で再生可能エネルギーの導入が進んできました。日本においても、欧米各国に続きFIT(固定価格買取制度)を導入し、多くの再生可能エネルギー発電所が建設されました。
しかしその副作用として電気代の上昇などを招きました。ここではそのFIT制度を脱し、FITに依存しない太陽光発電所が今後増えていく理由を、現状を踏まえてお伝えいたします。

日本における太陽光発電所の現状把握

太陽光発電所は、2020年までFIT制度(固定価格買取制度)の下で着実に設置数を伸ばして来ました。設置数が増えるとともに性能の向上とコストダウンが図られ、再生可能エネルギー(以下、再エネ)設備のなかでも太陽光が最も技術進歩がありました。これらはFIT制度の大きな功績といえます。

太陽光発電導入量の推移

太陽光発電導入量の推移
出典:isep 環境エネルギー政策研究所(https://www.isep.or.jp/jsr/2017report/chapter4/4-2

1kWあたりの太陽光モジュール(電池)の販売価格推移

1kWあたりの太陽光モジュール(電池)の販売価格推移
出典:自然エネルギー財団(https://www.renewable-ei.org/statistics/re/

しかしながら、電力会社の買取量も増えた副作用として、国民が負担する再エネ賦課金の上昇が起こり、電気代の底上げにも繋がりました。また2019年に発生した住宅用FIT制度の「卒FIT」と同じように、産業用FIT制度に則って行われている全量売電でも2032年には「卒FIT問題」が発生します。

卒FIT問題
出典:自然エネルギー財団(https://www.renewable-ei.org/activities/column/REupdate/20210416.php)

卒FITから非FITへ

卒FIT問題とは、FIT制度の下で行われていた電力会社による固定価格買取が終了し、新たな買取先の選定や使用用途を決めなければならないことです。住宅用太陽光発電のケースでは、蓄電池を導入して自家消費に回す方法や、ハウスメーカーなどが自社消費用に電気を買取したり、小売電気事業者が自社サービスにおいて再エネ電気の供給をするために買い取るという事象が発生しました。
2009年に認定を受けた住宅用FITが、2019年で固定価格買取制度の終了を迎えたところで、卒FIT電力の買取合戦が始まりました。このようにFIT制度下でなくても、太陽光で発電した電気の買取慣習が構築されつつあります。
しかしながら、住宅用卒FIT太陽光は規模が小さくも数も少なく、すぐに飽和状態を迎えます。そこでFIT制度下の太陽光発電所のほかにも、非FIT太陽光発電所の建設が進むことになりました。

非FIT太陽光発電所誕生ーもうひとつの理由

非FIT太陽光発電所の建設が進む背景のもうひとつの要因は、世界的地球温暖化対策の軸となる「パリ協定」の採択(2015年)と、それを基にした菅義偉 第99代内閣総理大臣が所信表明演説を行った際に「2050年を目標にカーボンニュートラルを実現する」と表明したことです。
「パリ協定」とは、COP21(国連気候変動枠組条約締約国会議の第21回目。開催地はパリ)で採択された、2020年以降の気候変動問題に関する世界的枠組みのことです。参加国だけでも、世界の温室効果ガス排出量約86%をカバーしています。
日本においてはパリ協定批准時は、2030年度までに2013年度と比べて26%の削減目標を掲げて参加していましたが、2050年にカーボニュートラルの目標達成をするには、目標値が低すぎたため、線が引き直され2030年度までに2013年度と比べて46%の削減目標と上積み修正されました。
このような経緯で、温室効果ガスの削減に向けた舵が一気に切られました。そこで国が推進しよとしているもののひとつが、太陽光発電の普及です。新築住宅にはかならず搭載することなど、あらゆる方向から検討されています。

太陽光発電由来の電気に環境価値をつけるためには

FIT制度下の太陽光は再エネが持つ環境価値が付加されませんでした。つまり使用する際はただの電気であり、非化石証書などの環境証書を別途購入して初めてカーボン・オフセットされる仕組みでした。
それでは「再エネ賦課金」と「環境証書」のダブルコストとなり、受給企業(特に企業体の受給企業)で「環境証書」を導入できる企業は、コストの都合上一定規模以上の会社のみになります。それでは、環境価値証書の導入はなかなか進みません。
そこで登場するのが非FIT太陽光発電所です。小売電気事業者(または電気を利用する企業)は非FIT太陽光発電所と直接相対契約を行い、電力卸市場を通さずに電気を購入することが可能になります。
発電所を持たない小売電気事業者はこれにより、環境証書を別途購入せずに100%再エネ電気を販売することが可能になります。再エネ電力を導入したい受給企業はこの小売電気事業者を選んで電気を使用するようになります。
※ 受給企業が電気を直接買い付ける場合は、密接な関係性(発電所と受給企業が同一会社やグループ会社など)である場合のみ自己託送という手段も利用可能です。密接な関係性がない場合の自己託送も導入検討はされていますが、法的(電気事業法)にも技術的(需給管理=同時同量の原則)にも難しいことです。

「自己託送とは」

小売電気事業者が求める理由

小売電気事業者に対しては独自の再エネ電気メニューの提供以外にも、再エネ電力の確保が必要になる理由があります。それは「エネルギー供給構造高度化法(以下、エネルギー高度化法)」によって、2030年度までに供給する電力全体の44%を「非化石由来の電力(以下、非化石電力)」を充当するように求められているからです。
非化石電力とは石油・石炭などを用いない発電方法で作る電気のことで、再エネ全般と原子力発電を指します。ただし、原子力発電所は一般電気事業者が保有する発電所がほとんどですので、相対契約を希望する小売電気事業者は実質、非FIT再エネ発電所から調達することに限られます。
小売電気事業者は、多くの受給企業のニーズに答えるためだけでなく、エネルギー高度化法の基準をクリアするためにも、より多くの非FIT太陽光発電所が必要となります。

企業が再エネ由来の電気を求める理由

2020年代より、企業運営は「ESG」と「SDGs」に主軸がおかれることになります。これは投資対象として企業判断される軸が「売上高」「株価」「配当金」などの他に、環境・社会貢献・企業統治を表す「ESG」指標を用いられるようになったのが理由です。
簡単な例では「石油」や「たばこ」「ギャンブル」などを扱う企業は、環境や社会に悪影響を及ぼすとして、投資対象としての価値が下がってきています。逆に環境に配慮した経営や商品開発などを行う企業、社会貢献する企業の価値が高まってきているのです。
また17の目標が設定され、世界各国の各個人までが求められている「SDGs」も、同じく企業価値の指標として用いられています。SGDsの目標設定のひとつであるNo.7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」のほかにも、日本が後手に回っているとされているNo.5の「ジェンダー平等を実現しよう」や、No.13の「気候変動に具体的な対策を」など、企業にとっても重要な項目が並びます。
そこで多くの企業が目をつけているのが「脱炭素」であり「再生可能エネルギー」なのです。企業活動で必須の「電気」を「再エネ由来」に変えることで、No.7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」とNo.13「気候変動に具体的な対策を」の解決に手をかけることができます。

【結論】非FIT太陽光発電の電気にニーズがある

ここまで、非FIT太陽光発電所ができる世相から、その電気を必要とする小売電気事業者や企業の事情についてご説明してきました。詰まるところ、非FIT太陽光発電所のニーズが高いのは、そこで発電される電気に需要があるからです。
需要先の小売電気事業者や、各企業が非FIT太陽光発電所を購入し運営するには、それなりの規模とノウハウが必要になります。また自社保有の自己託送を行うにも、需要と供給のバランスを保つための「発電計画」「調達計画」「販売計画」「需給管理」という非常に専門的な業務がついてまわります。
財務諸表上でも、固定資産税の計上など余分な支出も増えてくることを考えれえば、非FIT太陽光発電所から電気を購入する方法をとるのが、どの業態にも実用性の高い方法と言えるでしょう。各企業の電気に関わる担当者のみなさんは、まず導入までの相談から始めることをおすすめします。